いま一緒に働いている事業責任者は色々すごいところがあるのだけれど、一番すごいなと思うのはあらゆることを無邪気に質問してくるところである。
「これはなんでこうなってるんですか」、「なぜこうできないんですか」といった感じで、彼が"わからない"ことを「わからないから教えてほしい」というスタンスできちんと理解できるまで聞いてくる。その過程で、答えている側が何らかの先入観に囚われていたりすることに気づくことも多い。
彼のいいところは、「自分がわからないから教えてほしい」という純粋な気持ちで接しているように感じるところである。たとえば、「これはこういうふうに調整したら今月中にできないですか?」と聞いてきたりするが、その裏に「無駄なことをしているんじゃないのか?エンジニアリングスキルの問題なんじゃないのか?」といった相手を値踏みするような感じがない。邪気が感じられないのである。
知識と経験があるがゆえに先入観によって解決策の幅が狭まってしまうことがある。そういう時、"わからない"という無知と"わからないからこそ教えてもらいたい"という無邪気な姿勢が突破口になることがある。
たとえばシステムのパフォーマンス改善において、既存メンバーが「もうカリカリにチューニングしきっているからこれ以上は無理ですよ」と言っていた中で、入ったばかりのメンバーが「そもそもこの処理ってなんで必要なんですか?」と聞きながらキャッチアップして抜本的に改善できたという話を聞いたことがある。
あまりに無邪気な意見すぎるとオイオイと思うこともなくもないけれど、変に知ったふりをするよりもそのまま意見をぶつけてくる人がいたほうがよい。
彼の無邪気な雰囲気がどう培われたものなのかはわからないけれど、たぶん天然のものではなくテクニックのような気がする。相手に対するリスペクトが明確に伝わるような言葉を使ったり、枕詞を置いたりしている。「Again, 僕はわからないから、konifar sanに頼って教えてもらいたいんです」とか何度も伝えてくる。
また、無知でいいと思ってないところもいいのかもしれない。理解できるまで無邪気に質問しつつも、必要なドキュメントはしっかり読んでくるしキャッチアップを怠らない。それも伝わるから、この人はわからないことをストレートに聞いてくるだけと信用されるのかもしれない。
無知なだけではダメだし無邪気なだけでもダメ。2つを両立させてうまくコミュニケーションが取れると、先入観で見えていなかった突破口が開けることがある。そういうことが何度もあった。もう少し彼を見て学んでみることにする。