正論は人を傷つける。いつだって──
正論を言われた方が傷つくのは想像しやすいかもしれないが、実は言う方もダメージを負ってしまうことがある。真面目な人ほど、正論を振りかざすだけになってしまうことを怖れている。
誰かに正論を伝える時に意識しておくとよいお作法みたいなものがいくつかあると思っていて、雑に書き出してみる。
1. 正論になっているかを確認する
- 実は自分の情報が足りていなくて正論になっていないこともあるのでいったん疑ってみる
- 「言っていることが全然的外れだったら教えてほしいんですが」のような感じで、認識が擦り合っているかをまず確認するとよい
- 相手に敬意をはらい、「すでに色々検討された結果かもしれないですが」のような枕詞をつけるのも切り出しやすい
- ここの認識が揃っていないまま話していくと、終わりのない議論が続いていきがちなので注意
2. 責める意図はないことを伝える
- 正論を伝えることは批判ではないのだが、責められていると感じさせてしまいがち
- 「今までではなくこれからの話をしたい」、「過去や誰かを責める意図はなく、一緒に考えていきたい」のような感じでスタンスを表明しておくとよい
- 批判は絶対にしてはダメ。批判から展開される正論は感情で拒絶されてしまう
3. 相手のメンツを潰さない
- 相手のメンツを潰さないように場所を選び、伝え方を変える
- 人がたくさんいる場ではなくクローズドな場で伝えたほうがよいことも多い
- "まずできていることを認めてから話す"などもそう。自分がまわりからどう映るかを意識して何かいいことを言ってやろうとしたり、相手に非を認めさせて打ち負かしてやろうとしたりしてはいけない
- 正論を伝えるだけで前に進むことはないので、その先に一緒にやっていくことも想定して相手に拒絶されないようにすること
4. 沈黙になった時のまとめ方 / 引き方を想定する
- 正論を伝えられると、「せやな」と「それができれば 苦労はしねェ!!!」という2つが入り混じった変な空気になることがよくある。言った側がダメージをくらうのはほとんどこのパターン
- ギャグで滑った後の一言を考えておくような感じで、沈黙になった時にどう話を広げたりまとめたりするかを想定しておくとよい
- たとえば、「このたたき台があったからこそ今こういう議論ができて非常によいと思ってます」、「ひとつの提案なんですが、次のアクションとしてこうするのはどうでしょう」といった感じで、感謝や提案を伝えて切り替えるのもひとつ
ex. 正論だけを言いっぱなしでいい場を作る
- これまでの事情や現状は気にせずに正論だけを言える場があるとやりやすい
- 「変な空気になるのが嫌だな」と気にしなくていいし、代替案や改善策が固まってないことに引け目を感じる必要もない。とにかく言いっぱなしでいいというルールを作るのが大事
- 「そもそも会」、「今さら言いにくいことを言うチャネル」みたいな感じで、それっぽい名前をつけて運用するといいかもしれない
書きながら、正論ってなんだっけ?という気持ちになった。そもそも「これが正論だ」と100%自信を持っていたらそんなに困らないような気もする。正論かどうか自信がない中で意見を言うのが難しいのかもしれない。
この中だと 3. 相手のメンツを潰さない
が一番大事だと思う。正論の伝え方に限らず、誰かと仕事をする時には常に意識した方がいい。一緒に何かを前に進めていくなら、相手より優位に立って勝とうとしないこと。もしも戦略的にやる場合、「メンツを潰すことをしている」とつよく自覚しておくならいいと思う。無意識にやってしまうのがよくない。
正論を言うのを遠慮するようになると、組織が理想から考えられなくなり意思決定の質も落ちてくる。正論を受け入れる側の工夫 ももちろん大事なのだけれど、言う側も工夫できる。繰り返しているうちにそんなに気を遣わなくてもお互いに率直な意見を交わせるようになっていくのが理想。決着がつかないときはナイフエッジ・デスマッチを提案できるくらいの関係性を目指そう。