Konifar's ZATSU

私はのび太の味方じゃないわ、悪の敵よ

SHIROBAKOと後輩の門出

これはSHIROBAKO Advent Calendar 2017最終日の記事である。

3年くらい前、ちょうどSHIROBAKOが放映されていた頃、職場にスペイン人のインターンがやって来た。彼は自己紹介で「日本のRPGはすごい!日本の会社でゲームを作りたくて日本に来ました!」と言っていた。宮森にとってのアンデスチャッキー、遠藤さんにとってのイデポンのような存在が、彼にとってはテイルズやFFだった。

最初はたどたどしかった日本語もみるみるうちに上手くなった。Android開発の勉強も同時並行で、今思い出しても大変だったと思う。「速く描くには上手くなる。上手く描くにはいっぱい描く。いっぱい描くには速く描く」と杉江さんが言っていたが、実際にやるのはとても気力がいるし大変なことだ。

彼にはまわりを明るくする不思議な魅力があった。バグをドラゴンに見立て、リリース直前に「もう少し狩りに行くぜ」と言ってバグを潰してくれたり*1、「これできる?」と聞くと「もちろんできるけどやり方はわからない!」と笑って答えてくれたりした*2。宮森の素直さを持ち、行動が伴った太郎のような感じだった。

今でもよく覚えているのだが、ある日の飲み会で彼が 「僕にとってSHIROBAKOは人生だから!」と叫んだことがあった。彼はちょうど就活の真っ最中だった。「宮森が何度も就活で失敗してるところとか、ずかちゃんがオーディションに受からないところとか、これは僕だと思った」とも言っていた。そう、SHIROBAKOにはこれでもかというほど色々な立場のキャラクターの感情が盛り込まれている。とはいえ、まさかスペイン人から「SHIROBAKOは人生」というパワーワードを聞けるとは思わず感動してしまった。

後日、もう少し詳しく状況を聞いてみると、どうやら彼が憧れている大手コンシューマゲーム会社に中途で入るにはゲーム開発の実務経験が必須なようだった。当然ながら、言語やビザのハードルというハンデもある。何社も受けて同じ数だけお祈りされたらしい。まさにずかちゃん状態だ。しかし、23話のずかちゃんのような幸運がすぐに起きるはずもなく、結果的に彼はスマホゲームを作っている会社に入社することになった。言語のハンデもある中で、内定を決めただけでも本当にすごいと思ったし、寂しい気持ちはありつつも彼の健闘を祈りながら送り出すことになった。

それからしばらくは、Twitterで彼の様子をうかがい知るだけになった。基本的には楽しそうだったけれど、帰りが毎日遅くて疲れたとか丸一日会議でつらいとか、そういうツイートをたまに見かけるたびに、彼が平岡みたいになってしまったらどうしようと心配していた。いくらゲームが好きとはいえ、スマホゲーム開発は課金売上やグロースなどの要素が絡み、「自分はこんなことをしていてよいのだろうか」とみーちゃんのように不安になるかもしれない。

心配はしつつも、そもそも自分自身が人のことを気にかけられるほど余裕があるわけでもなく、日々の締切に追われたり、思い悩んで転職をしたりしているうちに早2年が経った先日、久しぶりに彼からDMが届いた。読んでみると、「転職するから飲みに行きましょう!」と書いてあった。嗚呼、やはり彼もみーちゃんのように次のステップに向けて踏み出すのだな、めでたいことだ、なんて思っていたら、「○○に転職します!夢に大きな一方近づきました!」*3と続けてDMが届いた。○○というのは、彼が憧れていた会社だった。あまりの不意打ちに不覚にもちょっと泣いてしまった。どうやら、10話のみーちゃんではなく、23話のずかちゃんだったらしい。その朗報を聞いて、将来に悩む宮森のような焦燥も感じたが、それ以上に嬉しさが大きく、スペイン帰省から戻って来たら盛大にお祝いしようと返した。

1回目の就活で門前払いを受けていた彼が叫んだ 「僕にとってSHIROBAKOは人生だから!」という言葉は、2年経ってさらに深みを増したようだ。やはりSHIROBAKOは最高だなと思う一方で、自分の中のロロが「目先のこと(金)ばかり考えている時期はもう終わりだよ。そろそろ、少し高いところから遠く(人生)を見る時がきたんだよ」とささやいていた。


SHIROBAKO Advent Calendar 2017お疲れ様でした。書いてくださった皆さん、読んでくださった皆さん、ありがとうございました。松亭新年会*4、または来年のAdvent Calendarでお会いしましょう。

それでは、最後はこの言葉で締めたいと思います。 "どんどんドーナツどーんと行こう!"

*1:http://konifar.hatenablog.com/entry/2015/05/02/003449

*2:http://konifar.hatenablog.com/entry/2015/04/19/140322

*3:原文ママ

*4:Advent Calendar参加者の皆さんには後日日程を調整させてください。